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鮨と和の食 清吉

福岡市早良区原1-22-26

TEL.092-821-5064

一貫一話 第七話

寿司は、カウンターに座って完成する。

― 目の前で生まれる、香りと音と料理人の緊張感 ―

寿司屋のカウンターには、少し緊張感があります。

職人が目の前にいる。

包丁を握っている。

魚を切っている。

シャリを握っている。

次は何が出てくるのだろう。

初めておまかせを食べる方なら、なおさらです。

「どうやって食べたらいいんだろう」

「何か作法があるのかな」

「職人さんに話しかけてもいいのかな」

そんな気持ちになるのも、無理はありません。

だから私は、清吉のカウンターをつくるとき、

お客様には、できるだけ緊張せずに楽しんでほしい。

そう考えてきました。

一方で、

料理人である自分には、ほどよい緊張感があっていい。

とも思っています。

その二つが同時に存在する場所。

それが、私にとってのカウンターです。


料理人とお客様の目線を近づける

清吉のカウンターには、少し特徴があります。

職人が立つ場所を一般的なカウンターより約30cmほど掘り下げています。

理由は単純です。

料理人がお客様を見下ろす形にしたくなかったからです。

目線を近づける。

そうすることで、自然と距離が縮まります。

料理を出すときも、

「こちらどうぞ」

と、目の前で手渡せる。

お客様の表情も見える。

会話もしやすい。

寿司屋だからといって、肩に力を入れて食べてほしいわけではありません。

最低限のマナーさえ守っていただければ、あとはその時間を楽しんでいただきたい。

そんな思いがあります。


目の前でネタを切ると、カメラが一斉に向く

カウンターに立っていて、面白い瞬間があります。

魚を切っているとき。

あるいは、切り終わったネタをお客様に見せるとき。

その瞬間、

一斉にカメラがこちらを向きます。

もちろん、こちらから少し仕掛けることもあります。

「今です」

というタイミングをつくる。

すると、お客様がスマートフォンを構える。

シャッターを切る。

笑顔になる。

その場にいるみんなが、少し楽しくなる。

海外から来られたお客様の場合は、特にその反応がわかりやすいこともあります。

言葉が違っても、

「今、何か面白いことが起きている」

ということは伝わります。

私は、この瞬間が好きです。

料理を「食べるもの」だけにせず、

目の前で生まれるものとして楽しんでもらう。

それもカウンターだからできることだと思っています。


カウンターの向こうには、庭がある

そして、清吉のカウンターにはもう一つ特徴があります。

目の前に庭があります。

料理人との距離は近い。

けれど、視線の先には緑がある。

そのおかげで、カウンターに座っていても、窮屈に感じにくい。

私はこのことも、清吉のカウンターの大切な部分だと思っています。

今はマンションや建物が増えて、

ご自宅で庭を眺めながら食事をする機会は、ほとんどなくなりました。

だからこそ、

料理を楽しみながら、庭の緑を見る。

季節の移ろいを感じる。

少し遠くを見る。

そんな時間も残しておきたいと思っています。

料理人との距離は近い。

でも、空間は広く感じる。

この両方があることで、カウンターで過ごす時間が少し柔らかくなるのだと思います。

料理人にとって、カウンターは逃げ場がない

ただし、カウンターという場所は、料理人にとっては少し怖い場所でもあります。

料理を出した瞬間。

お客様が一口食べた瞬間。

その反応が、目の前でわかるからです。

表情。

会話。

笑い声。

食べるスピード。

そして、言葉。

喜んでいただけたかどうか。

よくも悪くも、すぐに伝わってきます。

だからこそ、料理人にも程よい緊張感があります。

「今日も喜んでもらえるだろうか」

「この料理はどう感じてもらえるだろうか」

そんな緊張感は、長く料理をしていてもなくなりません。

むしろ、なくしてはいけないものなのかもしれません。

お客様には安心して楽しんでもらう。

その一方で、

料理人は、目の前のお客様から逃げない。

それがカウンターの良さだと思っています。

カウンターだからこそ、できる料理がある

そして、私が長年カウンターに立ってきて、

「やっぱり寿司はカウンターで食べてもらいたい」

と思う一番の理由があります。

それは、

カウンターでないと味わえないものを、こちら側がつくることができるからです。

例えば、海老。

湯がきたての海老を出す。

鰻なら、焼き立て。

鯖の棒寿司なら、炙りたて。

料理が完成してから運んでくるのではなく、

お客様の目の前で、料理が一番いい瞬間をつくる。

そこには、味だけではないものがあります。

湯気。

香り。

熱。

焼ける音。

炙る音。

包丁の音。

目の前で料理が仕上がっていく時間。

私は、

香りや音も味のうち

だと思っています。

「出来上がった料理」ではなく「出来上がる瞬間」を

例えば、鰻の焼き立て。

でも、カウンターなら、

焼きたてをすぐ食べることができる。

甘い香りが立つ。

そして、

「はい、今です」

という瞬間にお出しできる。

それを食べていただく。

この体験は、料理だけを取り出してしまえば同じものに見えるかもしれません。

でも、実際には違います。

料理が出来上がる瞬間を一緒に共有している。

そこにカウンターの価値があると思っています。


お客様の反応までが、一つの料理になる

カウンターで料理を出す。

お客様が食べる。

その表情を見る。

そして、次の料理を考える。

これは、一方通行ではありません。

料理人が料理をつくり、

お客様が食べる。

それだけではない。

お客様の反応が、また料理人に返ってくる。

「美味しい」

という一言だけではありません。

驚いた表情。

笑顔。

写真を撮る姿。

一口目の沈黙。

思わず出るため息。

そういうものまで含めて、料理人は感じ取っています。

だからカウンターは、

料理を提供する場所であると同時に、お客様と一緒に料理を完成させる場所

なのだと思います。


寿司は、カウンターに座って完成する

寿司は、魚とシャリだけでできているわけではありません。

季節があります。

素材があります。

包丁があります。

握りがあります。

器があります。

日本酒があります。

そして、

その料理を食べる人がいます。

清吉では、そのすべてをカウンターの上でつなげたいと思っています。

料理人とお客様が向き合う。

目の前で魚を切る。

料理を仕上げる。

香りが立つ。

音が聞こえる。

お客様が食べる。

その反応が返ってくる。

庭の緑を眺める。

会話が生まれる。

笑顔になる。

その一連の時間まで含めて、

私は「寿司」なのだと思っています。

だから、

寿司は、カウンターに座って完成する。

これは、カウンター席が一番良いという話ではありません。

「カウンターでしか味わえない時間を、こちら側がつくりたい」

という、料理人としての私の考えです。

海老の湯がきたて。

鰻の焼き立て。

鯖の棒寿司の炙りたて。

そして、香りや音。

目の前でしか感じられない、その瞬間。

「このライブ感を味わいたい」

そう思っていただけるように。

今日もカウンターのこちら側で、料理をつくっています。


鮨と和の食 清吉

1967年創業。

福岡市早良区原で、鮨と和食を続けてきました。

福岡近海をはじめ、九州の旬の魚を中心に、その季節、その日の素材と向き合いながら、おまかせ料理をご用意しています。

完全予約制の店だからこそ、一組一組のお客様と向き合う時間を大切にしています。

カウンター8席。

目の前で料理が生まれる、その時間そのものを楽しんでいただければと思います。

福岡で、ただ寿司を食べるのではなく、カウンターで生まれる日本の食文化とライブ感を味わっていただきたい。

それが、清吉のカウンターです。

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